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嫌韓(いやかん)ってホントはどうなの?

安全保障貿易情報センター

日本の対韓輸出管理の運用見直しと
安全保障輸出管理のWTO適合性について

ー誤解に基づく争いは不毛ー
2019年11月1日
CISTEC事務局

(注)本資料は、安全保障輸出管理の観点から、あくまで非政府の輸出管理専門機関としての立場で、公開情報に基づきまとめたものであり、日本政府の立場、主張とは関係がない。

目次
Ⅰ 一連の経過
Ⅱ 日本の措置に関係すると思われる諸事案
Ⅲ 混乱の背景となった多くの誤解
Ⅳ 安全保障輸出管理のWTO安全保障例外条項への適合性
Ⅴ 日韓の正常化に向けての期待


Ⅰ 一連の経過

◇日本の措置
「韓国向け輸出管理の運用見直し」を発表(7/1)
①韓国に関する輸出管理上のカテゴリーの見直し(8/7施行)
・ホワイト国(現在“グループA”国)から韓国を除外。
②特定3品目を包括輸出許可から個別輸出許可へ切替え(7/4施行)
・レジスト/フッ化ポリイミドフッ化水素
(国際輸出管理レジーム合意による規制対象品のみ)


◇韓国の措置
日本の措置を、「徴用工」問題に対する報復措置と捉えて反発。
一連の経過(2)ー韓国の措置
①日本を韓国のホワイト国(「カ」地域)から除外(9/18)
②日本の措置をWTO提訴(9/11)
・提訴対象は、3品目の個別許可への切替え措置のみ。
・優遇国からの除外は、提訴見送り。⇐ココ重要
③日本の措置による影響が大きいとして、
WTO総会、主要メディア、シンクタンク等に「不当性」アピール。
・「被害」を受ける企業の支援/日本依存素材等の国産化推進 等

○韓国に関連する輸出管理をめぐり「不適切な事案」が発生。
○信頼関係を前提として輸出管理制度を運用してきたが、日本の申入れにも関わらず輸出管理当局間の協議が開かれず。韓国側が制度や運用を改善する確認が取れない状況が続いており、その改善も見込まれない。
○禁輸措置ではなく、従来韓国に対して実施してきた優遇措置を止め、他の多数の国と同様の通常の措置に戻すもの。
○軍事転用等の懸念が無ければ許可される。

 

全体的理由
対韓国運用見直しに関するMETIの説明 ープレスリリース、METIツイッター等より
○日本が主要な供給国として、国際社会に対して、適切な管理責任を果たす必要がある。
○この製品分野は、特に輸出先から短期間・短納期での発注が繰り返される慣行がある。
○現に「不適切な事案」が発生をしている。
3品目の個別許可切り替えの理由
「個別企業の取引の内容に係る事柄であり、輸出管理の執行に支障が生ずるおそれがあるため、具体的内容は公開せず」
日本政府の説明
フッ化水素を韓国企業の求めに応じて100輸出して、70は生産用に消費されたと考えられるものの、残り30の行方が不明であるため、韓国政府に照会しても回答がなかった。信頼して輸出してきたが、協議に応じてもらえない。」(小野寺自民党安全保障調査会長。他議員も同旨)
与党議員の説明(要旨)
①「不適切」ということは、違法事案ではないものの、輸出管理の基本に反した事案であること。
②最終用途・需要者の確認/迂回輸出・目的外使用の防止に万全を期すよう繰り返し指示していることから、それらが遵守されなかった/疑問がある事案であること
以上から、「最終用途・需要者」の確認の観点から疑問がある事案と推定。

 

「不適切な事案」とは何か?
Ⅱ 日本の措置に関係すると思われる諸事案

「不適切な事案」と密接に関連する諸事案 ―様々な懸念すべき点が明らかに
日本に不良品として返品輸出されたはずのフッ化水素が、日本側の輸入統計に計上されておらず、その行方について韓国国会で問題指摘されていること。
2015年以降、156件もの機微品目の不正輸出事案があったことが韓国国会において明らかにされたこと(フッ化水素も複数件あり)。
・以前にも、日本から韓国経由での中国向けの炭素繊維の不正輸出事案があったこと(2015年に有罪確定)。
・国連安保理北朝鮮制裁委報告書に、南北共同連絡事務所に無届けで石油精製品を持ち込み、注意喚起されたとあること(2018年)
①中国向けにフッ化水素の再輸出 ―許可の前提と異なる
②不良品として返品輸出されたフッ化水素の行方不明の問題
③大量の機微品目の不正輸出事案が明らかに
④その他
日本から包括許可を使って韓国企業向けに輸出されたものが、それら企業の中国の現地法人に再輸出されていると報じられたこと。

事案① 中国向けにフッ化水素を再輸出(1/2) ―許可の前提である仕向国、最終需要者が異なっている
日本経済新聞による報道(2019年7月20日付)
韓国産業通商資源部、韓国貿易協会の説明をもとに以下を掲載。
○韓国の半導体企業が、日本から輸入した高純度フッ化水素を、韓国工場で使用するほか、中国の現地工場に再輸出している。
○日韓中三国それぞれの貿易統計でも裏付け。(2018年)
・日本→韓国 約3万6800トン(日本統計)
・韓国→中国 4050トン(韓国統計)/4000トン(中国統計)
※中国の仕向地は、韓国企業の現地工場がある陝西省江蘇省(各7割、3割)。
○韓国当局は、この再輸出を許可している。


問題点
①日本から包括許可を利用して韓国企業の用途向けに輸出されたものは、当然その企業が最終需要者であることが前提。
②中国の現地工場でも利用する前提ならば、中国を仕向地とし、その現地工場を最終需要者として日本の当局の許可が必要。
③許可の前提である仕向国や最終需要者が異なる以上、韓国当局が輸出を許可しても、再輸出は不可。
④日本の輸出企業も、その点の理解と契約上の対応が十分ではなかった可能性。
事案① 中国向けにフッ化水素を再輸出(2/2) ―許可の前提である仕向国、最終需要者が異なっている

→5月17日付で朝鮮日報が報じ、7月1日に韓国政府が公表。
①2016年以降、件数、金額とも大幅に増加している。

戦略物資無許可輸出摘発現況
件数(件) 金額(1万ドル)
事案②ー156件もの機微品目の不正輸出事案が明らかに ー3年間に3倍と急増/生物・化学兵器関連物資が5割(1/3)
韓国政府が議員に提出した156件の不正輸出事案一覧が明らかに。

②化学・生物兵器関連物資が、約5割を占めている
・フッ化ナトリウム、フッ化水素酸⇒サリン原料
・ジイソプロビルアミン⇒VXガス原料
・シアン化ナトリウム⇒青酸ガス原料
・ジエチルアミン、フッ化カリウム化学兵器原料


国際輸出管理レジーム 件数 主な製品
AG(生物・化学兵器関連)
※CWC関連1件を含む。
70件 イラン(フッ化ナトリウム、ジエルチルアミン、バルブ)、シリア(生物安全保管キャビネット)、ベトナムUAEフッ化水素酸各1件)、
マレーシア(ジイソプロビルアミン)等
WA(通常兵器関連) 53件 熱画像カメラ、電波遮断機、赤外線カメラ、工作機械、ネットワーク保安装置、ICチップ 等
NSG(核・原子力関連) 29件 マシニングセンタ半導体製造装置、CNCマシン、圧力計、ジルコニウム(核燃料棒の被覆材)、ミリングマシン、質量分析器 等 MTCR(ミサイル関連) 2件 人造黒鉛ブロック、タングステンパウダー


事案②ー156件もの機微品目の不正輸出事案が明らかに ー3年間に3倍と急増/生物・化学兵器関連物資が5割(2/3)

①このような大量の不正輸出事案の存在は、これまで未公表(白書で件数のみ)。
公開されなければ、輸出管理の上で警戒ができない。
②生物・化学兵器関連を中心に、大量破壊兵器関連が全体の3分の2を占めている。
仕向地についても、北朝鮮やイランへの迂回輸出の中継地として取り上げられる国々が少なからず含まれている。
また、軍民融合戦略を推進している中国向けが40件以上ある。
③特定業者による不正輸出が繰り返されており、上位3社で全体の43%を占める。確信犯の存在が推測され、再発防止の実効性担保の点で疑問がある。
④行政措置として「輸出制限」が36件、「警告」が24件となっているが、日本を含めて通常ではこれらのレベルの行政処分対象者は企業名公表となる。
悪質事案は公表されないと、海外から韓国へ輸出する際、顧客審査対象にできない。
事案②ー156件もの機微品目の不正輸出事案が明らかに ー3年間に3倍と急増/生物・化学兵器関連物資が5割(3/3)

問題点
韓国国会・予算決算特別委員会での野党議員の質疑(2019年7月12日)
○韓国から日本に輸出されたエッチングガス(フッ化水素)量に関する日韓の貿易統計上の齟齬を指摘。
事案③ー「不良品」で返品されたはずのフッ化水素の行方 ー「日本向けに返品」と説明するも、日本の統計に計上されず(聯合ニュースCBSノーカットニュース 各2019年7月12日付による)
・今年5月に2回にわたって、韓国から日本にエッチングガスを輸出したものが、日本の輸入統計に計上されていないとし、99.7%のエッチングガスが消えたことになると指摘(輸出3万9650㎏⇔輸入120kg)。
・政府側は当初、把握していないと答弁したが、その後「関連業界に確認した結果、日本から輸入されたフッ化水素で不良が確認された為、日本に返品したもの」と説明。・議員は、統計に大きな齟齬があり、その行方について調査すべき旨を主張。
○韓国では、返送のための輸出は、個別許可の例外対象(許可不要)。
○許可不要の「返送」輸出は、不正迂回輸出の手口になり得るため、要注意。

 

問題点
事案④ー国連北朝鮮専門家パネル報告書での指摘 ー北朝鮮の調達ネットワークの事例/届出義務違反の事例
北朝鮮向けに 2017年10月に韓国・麗水で船舶用ディーゼル燃料を積みこまれた
「Lighthouse Winmore」号および「Billions No. 18」号を巡る調達ネットワークの事例が紹介。
第10回最終報告書(2019年)
・韓国が2018年9月に、開城に開設された南北共同連絡事務所へ石油精製品を持ち込んだことについて、安保理決議2397号は、「1718 委員会」に通知することを義務付けていると
の注意を示したとある。
・韓国は約 340 トンの石油精製品を南北協力事業のためだけに使用し、使われなかった約4 トンは持ち帰ったと説明。北朝鮮への経済価値の移転はないと主張したとのこと。
第9回最終報告書(2018年)


Ⅲ 混乱の背景となった多くの誤解
※最終用途・需要者確認/他目的利用・再輸出の防止等、輸出貨物の行方の把握を確実に担保すること。

 

日本の対韓措置の目的、意味は何か?

ー輸出管理の基本である「トレーサビリティの確保※ 」を確実に
ホワイト国除外の目的
①ホワイト国との間では、前掲のような多くの懸念される事態があった場合、「長期間協議が行えず、制度・運用改善の確認がとれない」ことは致命的。
②そのような関係下でも輸出貨物の「トレーサビリティの確保」が確実にできる許可に限定。
⇒厳格な自主管理を行う包括許可又は個別許可に限定したもの(ホワイト国向けに、簡易な自主管理でも認める包括許可の利用を不可に)
③キャッチオール規制の対象に追加。
3品目の個別許可への切換えの目的
①包括許可による輸出入当事者の理解と契約上の担保が十分でなかったことへの対応。
②当局自身によるトレーサビリティの担保。
③156件の不正輸出事案、フッ化水素の行方不明等を踏まえた予防的対応。

混乱の背景となった韓国側の大きな誤解(全体) ー「政治的輸出制限」「国際サプライチェーンを阻害」
①「韓国の将来の成長を妨げて打撃を与えるとの意図は明らか」
②「個別許可への切換えに伴う審査遅延、許可の可否の不確実性の増加による韓国産業全体に否定的影響」
③「半導体分野だけでなく、コアの159業種の国際サプライチェーンに悪影響の可能性増大」
・「まず主力業種の半導体関連のコア素材を個別許可に切り換え、許可の遅延/不許可との恣意的運用を行うだろう。」
・「次に、ホワイト国除外により、主力戦略物資の159業種も個別許可に移行して恣意的運用を行うだろう。 」
韓国側の大きな誤解に基づく主張(韓国政府『日本の輸出制限措置に関する基本的な立場』より)
韓国に打撃を与える為に・・・
次のように思い込んだ可能性大

混乱の背景となった韓国側の大きな誤解(日韓メディア含む) ―個別の制度運用について(1/2)
90日は関係法令一律の標準期間。輸出許可は概ね30~40日程度。
最初は書類等用意と慎重審査で時間要することは予測範囲内。
許可対象は国際レジーム合意対象品であることを認識せず。
レジストはEUV用、フッ化ポリイミドは一部の新規用途のみ。
全体の中ではごく僅か(1%以下)。
 現在の量産品の半導体に使うレジストや、有機ELパネル等に使うポリイミドは、もともと許可不要。
誤解②「許可まで90日以上かかる」「予測可能性に欠ける」
誤解①「対日依存度が高い3品目はスペック問わず許可対象」
(正しい判断)
(正しい判断)

混乱の背景となった韓国側の大きな誤解(日韓メディア含む) ―個別の制度運用について(2/2)
誤解④「キャッチオール規制で、METIの裁量で許可対象製品を拡大指定する」
誤解③「ホワイト国から外れると、包括許可が使えず、全て個別許可になってしまう」
簡易な自主管理でも取得できる包括が使えないだけで、厳格な自主管理を前提に取得できる包括は利用可能。対象品目もほぼ同じ(3品目除く)。
韓国では優遇国から外れると個別許可が原則となるが、日韓の制度的相違が大きな誤解要因となった可能性大。
個別許可でも懸念なければ短期間で許可(中台向けも個別許可で円滑に輸出している実績)
キャッチオール規制は、個別の輸出案件で具体的懸念がある場合のみ許可必要。
対象はごく限定的で殆ど許可不要。
韓国の「状況許可」と同じ。

(注)前記の誤解についての詳細は、CISTEC一般ホームページに掲載の下記の説明資料を参照されたい。
[URL]: http://www.cistec.or.jp/service/kankoku/190805setumeishiryo.pdf

誤解であったことが事実として明らかに(1/3) ー政治目的ではなく、輸出管理上の必要性に基づくことの証左
・極端紫外線(EUV)用フォトレジスト― 3件(審査期間約30~40日)
・フッ化ポリイミド(フレキシブル・ディスプレイ用)
―そもそも7~8月は不要として許可申請せず。
― 9月中旬に申請されたものは、9月末に許可(約15日)。
・気体フッ化水素エッチングガス)―2件(約50~90日)
⇒規制対象外である以上当然
⇒個別許可は6ヶ月有効なので、その分の手当はできたということ。
【3品目について】
現在量産中の半導体有機パネルに使われるレジスト、ポリイミドは、従前通り輸出が継続。
許可も次々と下りている。審査期間も従来の想定期間内
⇒韓国政府は、許可件数が少ないというが、そもそも全体で何件が許可申請中かを明らかにしていない。
・フッ化ポリイミドは、 7~9月半ばまでは、不要として申請していなかったことが明らかに。誤解であったことが事実として明らかに(2/3)

ー政治目的ではなく、輸出管理上の必要性に基づくことの証左
液体フッ化水素の輸出審査に慎重になるのは、前掲の事情からやむを得ず。
①「不適切事案」が実際に発生していること。
②日本から韓国企業向けに輸出されたものが、中国の現地法人向けに継続的に再輸出されていると、韓国政府等のコメントとして報じられていること(=目的外使用、迂回輸出)。
③156件の不正輸出事案のうちに、フッ化水素が2件含まれ、内1件の処分が今年初めであり間もないこと。
④日本に不良品として返品輸出したとされるフッ化水素の行方が不明であると、韓国国会で問題提起されていること。
⇒審査が始まるのは、全ての書類が揃ってから。
最初は、最終用途・需要者の確認、他目的利用・再輸出の防止の確実な担保、誓約書の取得等の審査手続きには時間を要する。
2回目以降は比較的円滑に進む。許可が下りるのは時間の問題。

誤解であったことが事実として明らかに(3/3) ー政治目的ではなく、輸出管理上の必要性に基づくことの証左
・ホワイト国限定の一般包括が使えないだけで、特別一般包括許可、特定包括許可は引き続き利用可能だった。・対象品目も従来と同じだった。
【ホワイト国からの除外について】
・そのような措置は、もともと法制的にあり得ない。
・キャッチオール規制は、韓国の「状況許可」と同じ。誤解は生じようがない。
ホワイト国から除外後も、3品目に加えて「韓国の159の主要戦略物資が個別許可に切り換えられる」ことはなかった。
ホワイト国から除外後に、「キャッチオール規制の適用により、METIの裁量で多くの製品を個別許可対象にできてしまう」ことはなかった。
実務的には大きな意味合いを持つ


韓国への配慮措置 ー非ホワイト国では最も優遇されている
韓国に打撃を与える目的ならば、考えられない措置。
政治目的ではないことの証左であり、日韓のサプライチェーンへの影響
を最小限に抑えようとしたことの証左。
①ホワイト国から除外しても、韓国向けの特別一般包括許可は、ホワイト国向けと同じ品目範囲で適用可能としたこと。
②他の非ホワイト国向けには特定包括許可(特定の需要者向けのみ対象)
しか使えない品目でも、韓国には特別一般包括許可を利用できるものも認めたこと。


韓国への配慮措置

韓国政府自身も「被害」がないことを認めつつある
【 従来の主張】(7/23のWTO一般理事会での発言)
「日本の恣意的輸出規制措置は、政治的目的で、世界貿易を妨げる行為であり、WTOの多国間貿易秩序に深刻な打撃を引き起こす」「全世界の工業生産に否定的影響を与える」 (大統領府冊子『二度と負けない』)
【最近の説明】
①産業通商資源部
・9/11 「ホワイト国除外は制度変更がなされただけで、実際の輸出規制強化につながっていない」(ハンギョレ新聞9/11他)
・10/10「実際に生産上の被害が生じたという報告事例はない」(中央日報10/11)
②大統領府・金尚祖(キム・サンジョ)政策室長
「3品目に対する直接的な規制、ホワイト国除外措置などが韓国経済に直接もたらした被害は一つも確認されていない」(10/7。ハンギョレ新聞10/9他)
(注)下記記述は、それぞれの日本語版の原文。

小括
①日本政府の対韓輸出管理見直しは、「最終用途・需要者」の見極めと「他目的利用・迂回輸出」の防止という輸出管理の基本的要請に忠実な措置であった。
韓国に対する恣意的な政治的措置ではなかったことが、事実として明らかに。
②韓国では、輸出管理上懸念すべき事案が少なからず生じていた。
ー日本政府が「懸念なければ許可を出す」と当初説明した通りに、許可は次々と下りている。
半導体産業や主要業種の国際サプライチェーンに影響ないことが明らかになっている。
③韓国の反発は、日本の措置内容や制度運用に対する大きな誤解に基づくものだった。
④既に韓国産業界の誤解は解けており、韓国政府も被害が生じていないことも認めている。
⑤日本政府は、サプライチェーンへの影響を最小限に抑えるために、韓国に対して実務的に大きな意味がある配慮措置を講じている。

 

Ⅳ 安全保障輸出管理のWTO安全
保障例外条項への適合性

安全保障輸出管理は、国際輸出管理レジーム合意に基づき実施。
■安全保障輸出管理の基本は、
①輸出許可制度を設ける。
②レッドフラグ※等による慎重審査⇒懸念があれば輸出を認めない。
※懸念の有無を見極めるためのチェックポイント。日米等の主要国、国連傘下のIAEAでほぼ共通のものを定めている。
③懸念の有無、制度運用状況等によって、仕向国の取り扱いに差を設ける(個別許可か包括許可か、必要書類の多寡等)。
韓国主張のように、WTOの「数量制限の禁止」「最恵国待遇」に違反するとされれば、安全保障輸出管理は成り立たない。
WTO加盟国には輸出管理レジームや各種の大量破壊兵器等の不拡散条約未加盟の諸国も多数。これらに取扱いの差を認めないのは不合理。

 

安全保障輸出管理のWTO安全保障例外条項への適合性(1)
1. 「国連憲章に基づく義務」(21条(c))
○国連安保理決議1373号、1540号で、輸出管理を加盟国の義務化。
1373号:テロ組織等への全ての経済資源の直接間接の利用可能化禁止。
1540号:輸出管理、最終需要者管理の確立を含め、適切で効果的な輸出管理の確立・発展を。
北朝鮮・イラン制裁決議--核・ミサイル関連貨物等や軍部・指導部に資する石油製品、贅沢品の輸出禁止。
武器貿易条約、特定通常兵器使用禁止制限条約、懸念国・主体への武器禁輸決議等に基づく輸出禁止。
WTOとの調整は正面から行われたことはないが、GATT21条(安全保障例外条項)に適合。

2. 「締約国が、自国の安全保障上の重大な利益保護のために必要と認める措置(略)軍需品の取引、軍事施設に供給するため直接・間接に行われるその他の貨物・原料の取引に関する措置」(21条(b) (ii) )
○専用品・汎用品が軍事用途に使われる取引に関する措置との趣旨であり、安全保障輸出管理のプラクティスそのもの。
○我が国の近隣諸国に安保理決議に違反して核・ミサイル開発を推進する国、先端兵器開発・配備を推進し緊張を高めている国が存在していることから、輸出管理は「自国の安全保障上の重大な利益保護」に該当。
安全保障輸出管理のWTO安全保障例外条項への適合性(2)

■問題点1ー基本的問題点
韓国のWTO提訴理由の問題点(1)
・輸出管理の基本は、輸出許可制度の導入、慎重審査、仕向国の懸念や製品の機微度、制度運用水準による取扱いの差(個別許可・包括許可の適用、審査書類等)等。
・懸念がない/制度運用水準が高い等により、優遇国を設ける事例は米欧豪加日韓で共通。
・これらをWTO違反だと韓国自らが主張するならば、韓国がWTO加盟国から提訴されれば抗弁不可能に。
①輸出管理の基本プラクティス自体を否定。
②個別許可を、遅延要因、制約要因としてしか捉えていない。
・個別許可を、「過度に厳しく、不必要な遅延等の重大な制約」と主張。
・しかし許可制度は、最終用途・需要者への懸念、他目的利用・第三国移転等の懸念の有無を見極めることが目的。ケースによって審査期間が異なるのは当然。

・審査書類は、懸念の有無を見極めるための必須書類。少なければいいわけではない。
・中国、台湾、アジア等向けは、個別許可であっても円滑に輸出している実績。

■問題2ー多くのダブルスタンダード
韓国のWTO提訴理由の問題点(2)
・韓国自身が輸出管理による輸出許可制度を設け、優遇国を設けて個別許可、包括許可の使い分けをしている。
・日本にはそれは数量制限であり最恵国待遇違反だと批判する一方で、自らは同じ制度運用をしていることを棚上げ。
①韓国自身が輸出管理レジームに即した制度運用を行っていることを捨象
②韓国自身が、日本を優遇国から除外し、リスト規制全品目を原則個別許可に切り替えたことを捨象(包括許可は例外的場合のみ)。
・日本が韓国に対し3品目を個別許可に切り替えたことをWTO違反だとするならば、自らそれを遙かに上回る規模の違反をしている構図。
⇒日本の制度運用が問題だとする一方で、自らも同様の制度運用を行っていることを棚上げして批判するダブルスタンダード

WTO提訴継続の不毛さ
・当初の「韓国へ打撃を与える政治目的」は誤解だったことが明らかに。
・粛々と許可が下り、戦略的品目への拡大もなく、国際的サプライチェーンにも影響なし。
・韓国政府も、日本政府の措置による「被害」がないことを認めている。
フッ化水素の輸出許可は、審査書類が整えば、時間の問題。
・日韓間の緊張の継続、経済面の負の影響の拡がりの懸念。
・韓国の主張がブーメランとなり、韓国自身が非優遇国から提訴されて抗弁できなくなるリスク。
・韓国自らが拠って立つ国際レジーム合意に基づく制度運用を危うくするおそれ。
①政治的目的ではなかったことが、事実として証明。
②韓国自身、「日本の措置が実際の生産に支障等の被害につながるか、もう少し見極める必要がある」としていたはず(韓国政府『二度と負けない』より)
③被害がない中で、WTOで争うことは不毛なエネルギーの浪費。
④安全保障輸出管理の世界の自傷行為になる恐れ

 

Ⅴ 日韓の正常化に向けての期待

日本の措置への懸念の払拭のためには? ー冷静に正確な理解を
・最終需要者である企業自身の製造工程で使うことの説明。
・在庫としての輸入は、適正在庫分であることの説明。
・最終需要者誓約書の提出。
・定期的協議だけでなく、日常的な内々の情報交換

・連携の促進。
・日韓間の制度運用の差異についての理解促進。
・韓国で大量の不正輸出事件が生じた要因についての懸念の払拭。
・ペナルティが重い不正輸出事案の継続的公表(輸出者と事案概要)。 等
・最終需要者として許可を得て輸入した製品は、自ら使う。
・自社の海外現地法人といえども、日本から調達した物資の再輸出は不可。
①早期に輸出許可を得るためには?

ー最終需要者の協力が必須。
②他の戦略物資に拡大させないためには?

ー輸出管理の基本の徹底。
③関係正常化のためには?

終わりに
■今回の運用見直しで、マスコミ報道による誤解の増幅もあり、一時は不安と混乱があったが、現在では不安も概ね解消されつつある。
⇒日韓双方の企業間では、逆に絆が深まったという声もあり。
■産業界から見て、日韓の輸出管理に関する制度運用は、それぞれ優れている面もあれば、改善を期待したい面もある。
⇒民間サイドとしては、誤解に基づく不毛な争いにエネルギーを割くのではなく、相互の制度運用の充実・合理化と当局間の連携の再構築に向けた取組みを期待。
◎韓国政府の冷静な対応を強く期待!

 

 

 

 

韓国政府は、このような主張の意図が何なのか把握に入った。

産業通商資源部の関係者は、「今日(4日)午前関連事実を受け、文章一つ一つを見て見て発言目的などを察している」とし「これで2次両者協議を保持するためのスケジュールを調整している」と述べた。

 

 

あぁ~~長すぎて彼らには理解できないと思いますよ。